小川洋子の本
新聞の書評を読んだり、たまたま書店で手にした1冊が、ストーリーが面白かったり、表現方法に興味を感じたりして、同じ作家の本を何冊か読みたくなることがある。
小川洋子の本は、「博士の愛した数式」が奇抜な人物の設定で、綿密な計算のもとに組み立てられ、展開していく構成があまりにも見事だったので、ほかのを読んで見たい、と心を誘われた。
それで、芥川賞を受賞した『妊娠カレンダー』、『薬指の標本』、短編集の『まぶた』、そしてエッセイ集『深き心の底より』と続けて読んだ。
実在し得ないような奇妙な人物がときどき登場したり、「体の一部が消えていく」とか、「身体が消滅していく」という非現実的な表現でありながら、妙に生々しく感じる。
たった一言が、その場の雰囲気、主人公の気持ちを表し、作者の優しい豊かな感情さえ読み取れるというような言葉に出会ったとき、ストーリーは忘れても、その言葉のみが記憶に残ることがある。
小川洋子の本には、そういう秀逸な表現に出会うことが多い。
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