故郷が遠くに
倉敷から帰宅したらいつも「今、家に帰ったよ」と電話を入れていたが、もう電話する必要がなくなった。
入院してすぐに、医者からは1~2週間しかもたないと言われていたが、3週間目に母は逝った。
親族だけでお葬式を行い、兄たちが式後に親しくお付き合いして頂いていたご近所に挨拶に行った。
そしてその後、私がいる間に何人もの方が弔問に来て下さった。
老人会からはお仲間5人が来て下さり、毎月1回公園のお掃除をし、時々お食事会かたまには旅行をしているという、ご近所同士とても良いお付き合いをされている人たちだった。
「お写真の前でこうしてお話するのも供養になるんじゃないかしら」と、「お母さんはいつも綺麗にしていられた」とか、「玄関にいつも花を生けておられた」とかいうお話をされた。
母がケアハウスに入ってから、私が帰ったときには2日くらい家で過ごすことにしていたが、その時もよく家をのぞいて声をかけて下さっていた前や隣の家の人たちは、母に我が家に帰った喜びをより大きく感じさせてくれていた。ありがたいことだと思う。
私の中学、高校の同窓会も、母がいればこそ飛んで帰って出席していたが、これからはそのことのためだけに帰郷するということもないだろう。
故郷とのつながりが、急に細くなったような寂しさも覚える。
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