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2011年10月13日 (木)

大原さん親子

今、友達が貸してくれた、大原孫三郎、総一郎親子の伝記2冊を読んで、改めて、ふる里倉敷が生んだ経済人の途方もない偉大さを思い知った。

クラレの発展、世界的な名画の数々を所有する大原美術館が今日あるのは、単に事業家として成功した人が、収益を形として残したというのではなかった。

並々ならぬ文化人としての気質が、人間の真髄に迫る本物を人々の目に直接触れさせたいという、高い志から実現せられたものだった。

私が20歳のころ、総一郎さんは、なくなられる数年前のこと、多忙な日常の合い間、倉敷で無料のレコードコンサートを数度催された。

レコードを聴き終わったあとは、ご自身が丁寧な解説をされた。

そのときの温厚で静かな語り口を思い出す。

私が子供の頃、大原美術館は、これほどの名画が収蔵されているにもかかわらず、訪れる人はあまりおらず、館外の敷地で時々遊ばせてもらった記憶がある。

伝記によれば、総一郎さんは、早くから国土の自然破壊に警鐘を鳴らし続けられたという。

亡くなられる2年前の昭和41年(1966年)の産経新聞に載った座談会で、

『いまの余暇の時間は国土破壊の時間、レジャー産業におどらされて人心がアナーキーになっている。

「よくもりっぱな経済成長という美名にかくれて戦争で破壊された以上の破壊を戦後にやってしまった」といわれないようにしておきたい」

と発言されている。  

”う~ん”とうなりたくなるような言葉だ。

ほんとうに日本の将来を憂う深い洞察をされる人だった。

”孫三郎さんも総一郎さんもえらかった”

倉敷の人の共通の気持ちは今もかわらない。

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