漱石の孫
大文豪の夏目漱石の孫の半藤末利子さんは60の手習いで文章を書き始められた。
「夏目家の福猫」は漱石について、母から伝え聞いたことや、漱石にまつわる出来事などが、ユーモラスに書かれていて面白い。
小説の背景にある、その頃の漱石の実生活が語られていたりする。
『我輩は猫である』のモデルとなった黒猫は、出入りのあんま師から、
「この猫は足の爪の先まで黒うございますから、珍しい福猫でございますよ」
と言われて、漱石の奥さんに掌を返したように大事にされるようになったという。
ご主人の、昭和史の権威である半藤一利氏と二人で漱石の小説『草枕』の跡を辿る旅行をされたときの話では、
”漱石ゆかりの宿”で出された、有明海の魚料理のあまりのおいしさに、
「春の湯や那美さん来るも来ぬもよし」の句が、一利氏の口から出た。
すかさず、末利子さんが答えた句がふるっている。
「那美さんの来るはずもなし妻の居て」。
『草枕』にでてくる宿の女主人、那美さんの小粋で鮮やかな姿が思い浮かぶ。
感性の豊かさが、旅の味わいをより深いものにしている。
末利子さんも素敵な方だが、周りで暮らした人たちが見た文豪の素顔は興味深いものがある。
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