迷い犬
大通りに面した物置小屋の戸口に、数か月前から大きな張り紙がなされている。
大写しに引き伸ばされた犬のカラー写真と『迷い犬を預かっています』という文句が書かれている。
奥の方をみると、中型の成犬が垣根に長い綱でつながれて、こちらを見ていた。
そこの前を通るたび、犬の姿を見ていたが、そのうち見えなくなった。
それでも張り紙はされたままである。
たぶん、犬は面倒をみてもらっているうちにその家の人に懐き、その家の人も可愛く思うようになり、飼い犬のようになって、通りから見える庭の先の方から家族の住まいに近いところに移されたのだろうと思う。
その張り紙から、きっと優しい人にちがいないと思われたから。
でも、元の飼い主が一生懸命に探しているかもしれないから、張り紙はそのままにしておくしかない。
ひとまず安心した気持ちになった。
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