優先席
所ジョージさんが、朝のNHK番組に出演していた。番組の前宣伝のようだった。
その中で、バスの老人の優先席というのはおかしい。若者の遠慮席というべきだと言っていた。所さんは言葉を大事にする人のようだ。
それで、先日私が経験した、ちょっとした違和感を思い出した。
混んだバスの中で私が立っていたら、斜め前に座っていた中年女性が、
「どうぞ座ってください。すみません、空いていたから座っていただけなんで」
と、ひどく悪びれた様子をされた。
最近は席を譲られることにも慣れたが、私は立っているのがしんどいと思うほど、疲れてはいなかったし、かえって座っている人を立たせて申し訳なかったと、すまない気がした。
所さんの話を聞いて、そうか、優先席とあるから、老人の範疇に入る人には、そこに座る権利がある、みたいな気持ちを持たされるんだな、と思った。
内田百閒の『第一阿房列車』の中で、
”遺失物取扱所”と書いている窓口を見て、連れの者に、
「遺失物というのは、落として、なくなった物だろう。なくなった物が取り扱えるかい」
「拾って届けて来たのを預かっておくのでしょう」
「拾ったら拾得物だ。それなら実体がある。拾得物取扱所の間違いかね」
というくだりがある。
百閒先生にかかれば、訂正したくなるような、間違った言葉遣いがいっぱいあったにちがいない。
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