カズオ・イシグロの本
ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロが、映画『日の名残り』の原作者だったとは驚いた。
BSプレミアムで、アンソニー・ホプキンスが演じたイギリス貴族の執事役がすばらしかった。
今、書店ではカズオ・イシグロの本が何冊も並べられている。
早川書房からすべて文庫版で出されているのはありがたい。
早速、『日の名残り』を買って読んだ。アンソニー・ホプキンスの名演技を思い出しながら。
本の場面にチラチラ映像が思い浮かぶのも一層たのしい。
じっくりと味わえて素晴らしかったので、次に書店で、何冊もの中から、題名に惹かれて『充たされざる者』と『忘れられた巨人』を購入した。
『充たされざる者』は900ページを超える大作で、普通の小説の3冊分ほどある。
読み始めて、ストーリーの展開がすごいと思う。脈絡なく話が次へと進む。
ちょっとわかりにくいが、部分的には風刺がきいてあきさせない。
訳者の後書きを読めば、なるほどと思う。
”この作品はブラック・コメディーとして書いたもので、リアリズムの小説家とは二度と呼ばれたくない”というのが、本人の弁だそうだ。
この長すぎる小説について、欧米での評価は、批判と称賛とが二分しているという。
私など到底、理解などできはしないが、とにかく、ものすごい才能ある人だと思う。
イシグロは社会の動きにも文学者の立場から、強い関心を持ち、警鐘を鳴らす。
イギリスのEU離脱に対して、新聞でものすごく怒っていたという。
このような人から見れば、政治家のやっていることは、憤懣に耐えられないことばかりに違いない。
勇気ある、モノ言う文学者はこれから何をやってくれるのだろうと、海を越えて楽しみな人である。
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