『まあだかい』
内田百閒の随筆の中でも一番好きなのは『まあだかい』である。
『摩阿陀会』とは、教え子や百閒先生を慕う人たちに還暦を祝ってもらって以後、亡くなる前まで続けられた百閒先生の長寿を祝う会である。
16年目の『まあだかい』、百閒先生が76歳のときの感懐は次のようであった。
”そもそも天行すこやかにして、歳月移り行けば人は歳を取る。歳を取ればどこかに老衰の徴があらわれる筈で、足が悪くなるなぞ、その最も手近かな徴候である。つまり足が青天白日の下、正々堂々と老衰の進軍喇叭を奏しているのではないか。それなのにいつまで経っても『まあだだよ』で摩阿陀会に招かれる。”
(天行〈てんこう〉とは天の運行のこと、小さい辞書には載っていない。百閒先生はものすごく学識の深い方なのである。)
これは、百閒先生流の、後生を励ます言葉なのではないかと思う。
『まあだかい』は当初30名くらいであったのが、教え子らの子たちも出席するようになって、60名を越すようになる。
偉大な文学者に子等を会わせておくことは、子等にとって大きな財産になると思われたからだろう。
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