室生犀星の先見の明
『 ふるさとは遠きにありて思うもの そして悲しくうたうもの よしや うらぶれて異土の乞食(かたい)となるとても 帰るところにあるまじや 』
室生犀星の詩である。
小説では「あにいもうと」「杏っ子」などが有名である。
室生犀星の『我が愛する詩人の伝記』を読んだ。
自身は72才まで生きた人であるが、親しく交友のあった詩人仲間たちの早すぎる死に対して、感慨深く語っている。
”もう後五十年たてば人間は六十歳くらいの年齢で、改健期の国家手術が行われ、いまの生年の二倍くらい生きられることはうけあいである。つまり心臓とか胃腸とか頭脳とか視力とかの老衰状態は、その部分の改健手術によって保存されるのである、その時世にあっては人間の性格というものの悪辣残虐な行為も、いまの倍加を意味するであろうが、・・・そういう天国(ごくらく)をみすみす指折り算えながらわれわれは死ななければならないことは、額に汗する思いなのである。”
このとき犀星は69才、1958年のときの感慨である。
まさに私たちはその通りの人生を生きている。
今起きている戦争の悪辣残虐な行為が、なぜいつまでも続くのか!
犀星はそんなところも見通していたようだ。
| 固定リンク
最近のコメント